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Global Targets / Our Research

自動車産業での分離膜

研究背景

地球温暖化に貢献すると言われる二酸化炭素の排出量をいかに抑えるかは、21世紀の大きな課題である。 なかでも、自動車等を含む輸送部門からの排出量は、全体の約20%を占め、排出量削減の余地が大きく残されている。 そういった背景から、近年、電気自動車や水素自動車の開発がさかんに進められているが、2050年時点では、 世界全体に普及している自動車の50%以上に内燃機関が搭載されているという見通しが立てられており、 内燃機関の効率向上、つまり燃費の向上が求められている(図1)。

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図 1 IEAによる2050年までの新車販売量の予測

リーンバーンによる燃費向上技術

燃費を向上させるにあたって、リーンバーン(希薄燃焼)という技術が有力な候補として挙げられる。 リーンバーンとは、理論空燃比よりも燃料が希薄な状態で燃焼を行う技術であり、1990年代に積極的に研究開発が行われ、この技術によって、約10%の燃費向上が可能となることが実証されている。 しかしながら、過剰な空気供給下で燃焼が行われるため、窒素酸化物の発生確率が比較的高いことや、空燃比が理論空燃比から外れることで、 既存の三元触媒によっては窒素酸化物の除去率が大幅に低下してしまうことが課題となっており、2000年代初頭の窒素酸化物排出規制の強化によって、その研究は下火となっているのが現状である(図2)。

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図 2 空燃比に対する三元触媒の浄化率
ウインド領域が浄化作用の良好な範囲 (出典:monoist.co.jp)

ガス分離膜による給気改質

そこで当研究室は、大手自動車メーカーと協力し、窒素酸化物の規制を遵守しつつ、リーンバーンによる燃費の向上を目標とし、内燃機関に対する給気ガスの改質に取り組んでいる。 具体的には、酸素/窒素分離膜を用いて酸素を選択的に取り除くことにより、内燃機関への給気を窒素富化することに取り組んでいる(図3)。

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図 3 ガス分離膜を用いた全体システム模式図

適用予定のガス分離膜について

代表的な既存のガス分離膜として、ポリイミド膜やポリスルフォン膜等が挙げられるが、これらの膜材はガスの透過率が小さいという共通の課題を抱えている。 本研究プロジェクトにおける、自動車エンジンへの給気ガスの改質を考えると、処理すべきガスは大量であり、これらの透過率の小さい既存の膜材で達成することは極めて困難である。 本研究の目標を達成するには、①ガスの透過率が大きく、②酸素/窒素の選択分離率が高い材料を用いて、③厚さ1μm以下の薄膜を形成する必要がある。

これらの条件を満たす新規膜材として、当研究室はTOX-PIM-1の適用を考え、その薄膜化とスケールアップを模索している。 この膜材は、既存の膜材に比べ10~50倍の透過率を持ち、酸素/窒素選択分離率においても6以上という非常に優れた値を示している。 現在、この材料を用いて、厚さ1μm以下の薄膜を形成することに成功しており、更なる薄膜化と、スケールアップ方法の確立によって、プロジェクトの達成を狙っている。

将来の展望

酸素/窒素分離膜の自動車をはじめとする内燃機関への適用は、リーンバーンにとどまらない。 発進時や坂道走行時等の大きな出力を必要とする際に、選択的に分離し、貯蔵しておいた酸素富化ガスを、ターボチャージャー等を利用して内燃機関に給気することで、 より多くの燃料の燃焼が可能となり、一時的により大きな出力を得ることが可能となる。 この技術はさらに燃費を改善させることが期待され、これらの技術の複合によって、高燃費でクリーンな内燃機関を開発できる可能性がある(図4)。

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図 4 ガス分離膜を用いたリーンバーンとターボチャージャーの複合技術

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