健康に良いとされる特定の食品や食品成分についてご存知ですか?これらは「機能性食品」と呼ばれており、基本的な栄養素以上のメリットを体にもたらし、感染症や非感染症のリスクを最小限に抑える役割を果たすと考えられています。例えば、野菜やフルーツ、全粒穀物、強化食品や栄養飲料、栄養補助食品がそれに当たります。食生活と健康の関係性に対する興味の高まりと共に、機能性食品の需要は増加しています。消費者のニーズに見合った機能性食品を生産するために学術、化学、規制の分野においても多くの機関が発展、あるいは実現に向かって発展してきています。そして、現在機能性食品を加工するテクノロジーの中で屈指の技術となっているのが膜分離技術なのです。
分離膜技術について
- 食品産業における分離膜技術の市場は水、排水に次いで2番目に大きく、8~8.5億ユーロ規模に及びます。
- 従来濾過作業は、重力又は真空による駆動で液相を様々なフィルター(セルロース濾紙・ガラス繊維フィルター等)に通すものか、顆粒状物質(砂・無煙炭等)に拠って行われてきました。
- 現在の食品産業における濾過作業は圧力駆動の膜処理による膜技術で行われ、精密濾過(MF)・限外濾過(UF)・ナノ濾過(NF)・逆浸透(RO)といった方法で行われています。
Challenges
経済性と効率性を満たした分離・濃縮技術(テクノロジー)の設計が食品産業において課題となっています。.
- 食料システムの多様性: 各食品系によって粘度、サイズ、濃度の異なった粒子や質感、といった物理的な特性がある事。
- 加工中に起こる食品成分の易変性:多くの食品成分は酸素・強い圧力・高温に触れる事によって化学変化を起こしやすい事。
- より安全性が高く、刺激性の少ないテクノロジーの必要性:食品加工の全ての工程において、栄養価が高く、外部の汚染物質を全く含まず、微生物学的に清潔な食品が供給出来るようにする事。
- 持続性とエネルギー消費の低い技術の必要性:エネルギー消費、及びCO2の排出量を最小限に抑えた新技術が必要とされている事。
分離膜技術(テクノロジー)の利点
- 適温で食品加工が行える。
- ふるい分け、溶質拡散、鉄交換といった、独自の分離機構をベースとした選択性の高さ。
- コンパクトでモジュール設計である為、インストールや拡張が簡単に行える事。
- 従来の方法に比べてエネルギー消費が低い事。
食品産業で使われる分離膜技術のタイプ
食品産業における分離膜の消費量
分離膜の世界的年間消費成長率は7.5%です。何百、何千スクエアメートルもの分離膜が食品産業で使用されています。(2009年サクセナ等において、限外濾過: 400,000 ナノ濾過: 300,000 逆浸透法: 100,000 精密濾過: 5000 スクエアメートル)乳製品産業における分離膜技術の導入は、新規の素材、アセチルセルロース、ポリアミド、ポリスルホンが広く知られる様になった事で大幅に高まりました。
分離膜技術を使った機能性食品の製造
膜技術の欠点
自生的に発生する細胞外高分子物質が付着する微生物群集による膜汚損は、膜技術における主要な問題点とされています。これにより最終的な食用品質の低下や食品媒介疾患の原因となるのです。テクノロジーの膜汚損(生物付着)を防ぐエネルギー形態や洗浄には高いコストが必要となります。生物付着を防ぐ方法としてもっとも広く行われているのは事前消毒です。ただ、この方法は消毒によって膜が劣化し、いずれは菌膜が形成されてしまうので細菌を防ぐことはできていません。膜の表面に一旦菌膜が形成されるとそれを取り除くのは大変困難なのですが、生物付着が防止できて費用対効果も高く、広く適用出来る様なものは無いというのが現状です。ですので、今後私達はヘテロ原子(ニトロゲン/ 硫黄)を取り入れる、ポリマー骨格に官能基(OH, NH2)を取り込む、膜表面に接合するといった取り組みを行い、新規の生物付着を防止する微多孔膜の開発を行う事でこの問題に取り組んでいきます。
私達のアプローチ:
1) ポリマー骨格にヘテロ原子(N/S)原子を結合する。
2) ポリマー骨格に官能基(OH, NH2)を加える。
3) 膜の表面にグラフト重合する。