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ナノダイアモンドの組み込みによって可能となった耐湿性酸化グラフェンナノラミネートによ る水素分離の実現

 

 

ナノダイアモンドの組み込みによって可能となった耐湿性酸化グラフェンナノラミネートによる水素分離の実現

気候変動の加速に伴い、温室効果ガスの排出量削減が急務となっています。そして、燃やしても水しか残らない水素 (H2)は、それを実現する直接的な手段となります。水素の製造は水の電気分解や化石燃料の改質など、いくつかの工業プロセスで行われていますが、生成される水素の純度が低いため、そこからさらに精製する必要があります。水の電気分解では水素と酸素を分離する必要がありますし、化石燃料の改質では二酸化炭素などいくつかの主要な汚染物質が含まれます。そして、どちらの場合でも避けられないのが湿度です。

従来の分離操作とは異なり、膜分離システムは化学物質の追加や相変化を必要としません。また、スケールアップが容易でエネルギー効率にも優れているため、さまざまな気体や液体の分離に応用できる可能性があります。但し、高い分離効率と操作の安定性を実現するためには、プロセスに応じて膜素材を最適化する必要があります。例えば、従来の膜材料では水素との親和性が低いために困難であった水素をふるい分ける能力の高さに加え、耐湿性は水素分離のための膜材料を設計する上で重要な要素となります。

京都大学において、私たち分離膜研究グループはさまざまな分離ニーズに対応する膜を開発するために、新しい材料化学の探究を積極的に行っています。重要なことは、私たちが常により現実的な条件下で膜材料の能力をテストする事を心がけていることです。新しい膜材料の限界を探る上で、想定されるプロセス条件の影響を考慮することは、特に価値のあることだと考えています。

グラフェンの発見以降、気体や液体の分離を目的とした2次元 (2D)材料の開発に大きな関心が寄せられています。原子レベルの厚さとマイクロメートルレベルの横方向のサイズを備えたグラフェン系材料は高度なナノ膜を設計するための新たなプラットフォームとなるものです。通常の膜とは異なり、2次元材料から形成される膜は、理論的には単一原子のように薄くすることができ、最小の輸送抵抗と最大の浸透流束を実現することができます。層間間隔や2次元材料の制御可能な組み立てに由来するサブナノメートルの孔は、膜を介した水素の高選択的輸送を可能にします。

最近開発されたいくつかの高度なグラフェン系膜の中で、酸化グラフェン (GO) 膜は最も有望な膜とされています。しかし、ナノメートルサイズのグラフェン膜の開発は、GOシートの水分の不安定さが常につきまとう課題となってきました。GO膜が水蒸気にさらされると、層間間隔が広がってしまうのです。この膨張効果は、GOナノシート上の酸素含有基の水和に関連しており、膜の構造の崩壊をもたらします。

Nature Energyに掲載された私達の最新の論文における研究は、GO膜が高い水素精製の性能を維持しながら、湿度に対して安定化する事を目標としています。そのために、正に帯電したナノダイヤモンド(ND+)を負に帯電したGOナノシートに組み込みました。ND+と負に帯電したGO表面の静電的相互作用により、過酷な湿度条件下でも堅牢な微細構造を実現することができました。(図1)

湿気に対するの安定性に加え、ND+を含むことで全体の細孔容積が増加し、相対的に稠密積層状態のGOドメインの割合が減少するため、膜構造が分子輸送に利用しやすくなる(透過率が高くなる)ことがわかりました。したがって、GO単独で構成された膜に対するGO/ND+複合膜の優位性は、ND+を用いたGO細孔構造(寸法、屈曲度、および剛性)の操作によるものです。

本研究で開発した非常に安定した積層複合材料は、マイクロスーパーキャパシタ、燃料電池、センサーなど、他のエネルギー・環境分野への応用の可能性も考えられる魅力的なものであるといえるでしょう。

詳細については、Nature Energyに掲載された論文をご覧ください。www.nature.com/articles/s41560-021-00946-y

 

 

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