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第四次産業革命をクリーンテクノロジーの時代にするには?

 

 

第四次産業革命をクリーンテクノロジーの時代にするには?

現在世界が誇るテクノロジーの進化はここ2世紀程の間に飛躍的な進化を遂げたものです。サクセスストーリーとして段階的に記されたその歴史は皆さんもよく知るところではあると思いますが: まず、蒸気機関の実用化によって18世紀に機織の機械化が成されました。この労働の機械化は19世紀後半、大規模工場への道を開きました。そして、1970年代には機械化された労働が自動化され始め、世界の産業はすでに第三次産業革命と呼ばれるステージにまで達していました。機械学習やクラウドコンピューティングといったテクノロジーの進化に向けて突き進む今日では、2011年ドイツ政府によって名付けられたコンセプト、いわゆる”インダストリー4.0″ への取り組みが世界へ広がりつつあります。「それは言い過ぎだろう」と言いう方もいるかもしれませんが、言い過ぎであろうと無かろうと、インダストリー4.0によって世界が結構な速さで変わっていっているのは皆様もご存知知なのではないでしょうか。政府や企業は勝ち組になろうと惜しみなく資金を投じています。私達研究者も然りで、たとえ遠隔地からでも最新の研究成果をキャッチアップしようと試みます。すでに、若い世代(Z世代やミレニアル世代)がなりたい職業の上位はソフトウエアやデータ関連の職業が多く占めているのです!しかし皆さん、環境保全技術革命:「クリーンテック革命」はどうなったのでしょう?テクノロジーで世界を救いたいと言い出してからまだ10年も経っていないのですがお忘れではありませんか?

 

世界の産業はどこへ向かっていくのか? 

2000年代に入ってから、アカデミックの世界、産業界や政府の関係者も皆「クリーンテクノロジー」について話をしていました。とりわけ、バイオテクノロジーとナノテクノロジーは多くの分野、例をあげると再生可能なエネルギー資源への変換、低炭素な乗り物、エネルギー効率の高い水処理やリサイクル技術の向上などといった分野で大変革をもたらす事が期待されていたのです。ロン・パーニック氏とクリント・ワイルダー氏の著書「クリーンテック革命」(2007年)など、環境に優しいテクノロジーを詳しく、そのポテンシャルについて熱心に書かれた分厚い本も出版されています。クリーンテック革命は世の中の雇用を促進するものであり、地球環境を救うものであり;パリ協定(2016年)が採択されるに至った国際社会のコンセンサスの一つであると言えるのではないでしょうか:大きな期待が寄せられていたのです。

 そして、世界は良くも悪くも全てがインターネットなどで相互接続されている時代、インダストリー4.0に入っていったのです。このシステムは、ほとんどの場合その機能が約束されており良い事が多いのではないかと思うのですが、モチベーションの核が持続可能性や生態系の回復でないかぎり、全てにとって良くないものにもなり得るのではないでしょうか。インダストリー4.0の中にも持続可能性を追求したテクノロジーに関する取り組みはあります。例えば、産業のデジタルトランスフォーメーション化は資源生産性を高めるものです。(資源の賢明な管理は地球環境にとってもその性能を高めるものになるので。)けれどもインダストリー4.0の市場ダイナミクスがそのままサスティナブルな世界への革命を保証するものになるでしょうか?

 

よりグリーンなテクノロジーと関心を持つ事の重要性

私の知る限りにおいて、前記の質問に対する答えはポジティブなものではありません。インダストリー4.0を含めても含まずに考えても、現在の世界経済の方向性は近い将来における持続可能な開発ゴールを達成するものからは程遠いと考えています。経済成長を追求する経済モデルはすでにグリーンテクノロジーの推進を阻んでいるのです。クリーンテック(環境保全技術)が人気を取り戻し、新たに芽吹いたこの産業革命(インダストリー4.0)に不可欠な要素となることも考えづらいでしょう。ですから、私達は気候変動、医療や経済においてクリーンテックができる事にについて、直接的、間接的にでも少しでも多くの方々に関心を持ってもらえるようにしなければならないと考えています。そうする事でインダストリー4.0の政策や方針の方向性をクリーンテックが発展する形に近づけることが出来るかもしれないと考えているのです。但し自体はかなり深刻であるため、これだけでは十分ではありません。そしてこの深刻な状況が私たちにアカデミアや企業が行う研究開発の重要性に気づかせてくれるのです。

地球環境の問題は非常に複雑で、主要なものだけでも食料品や民生品、物流や交通、そして防犯や防衛に至るまで広域にわたります。全ての側面をカバーする事も、研究開発活動によってできる事をここで一つ一つ詳細に説明する事も非常に困難な事です。ですので、ここではクリーンテックの研究開発を通して環境問題にできる事としていくつかの見解をシェアさせて頂きたいと思います。まず大前提として、クリーンテックを持続可能な未来の実現に役立てるには産業界のリーダー、エンジニアや科学者、起業家や政治家がもっと環境保全にモチベーションを持つことが必要になります。この大前提の理由は、研究開発から大規模な運営への移行が大きく関わってくるのですが、大きな変革を起こすその段階でのゲートキーパーとなるのが主にこれらの人々だからです。次に、経済的に競合できるクリーンテクノロジーを提供する道筋をアカデミックの研究開発段階で明確に打ち出すことが出来なければクリーンテックが環境問題に変革を起こす事は出来ないという事です。理由は、経済という要素を無視するのは難しく、それが出来なければ長い目で見た時に変革は失敗に終わるのではないかと考えるからです。

また、これはちょっと偏った見解になるかもしれないのですが、今私たちの抱える様々な環境問題に取り組む上で必要なのは常識を覆すような材料技術である、と私は考えています。太陽電池、充電式や持続時間の長い電池もそうですが、これらは材料技術がもたらす変革の可能性を示した良い例です。電池の変革ほどのインパクトはないかもしれませんが、幸い私たちが取り組んでいる分離膜や吸着技術は近い将来に変革をもたらす有望な技術です。何十年もの基礎研究の末、様々な排気ガスを回収、隔離するのに効率的な素材基盤が出来上がりつつあります。最近の研究、例えば私の携わった研究でいうと、私は浄水処理場の排水からメタンを回収する、シンプルでありながら革新的な分離膜基盤の開発に取り組みました。Pureosityは地球環境問題解決を促すテクノロジーの分野において、革新的かつ実現可能な分離膜技術を数多く開発しており、私がPureosityに興味を持ち、チーム参加することになった背景にはそのようなグループの取り組みがあります。

私は、インダストリー4.0が地球を住めないような環境にしたくないという私達の取り組みを掻き消してしまわない事を、むしろクリーンテックが地球により良い変革をもたらせるよう、私たちの取り組みが促進されるようなものになっていく事を願っています。産業・経済は私たちの目の前で替えられていっているのです。 グローバルボイスのようなプラットフォームを通じて、科学に普段携わらない方を含め、より多くの方が私たちの取り組みや、持続可能な開発目標に関心を持って欲しいと思っています。その希望を込めて、最後にここでもう一度呼びかけさせて頂きたいのです。地球環境の悪化は歴史的に人間が引き起こしたものでもあります。どんなに小さな事でも構わないと思うのですが、何かやってみようではありませんか。もし、すでに取り返しのつかないところまで悪化していなかったとしても、私にはこの地球があと20〜30年、あるいはもう少し持つか持たないかというところまで環境が悪化しているように見えるのです。

 

参考文献

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