Pureosity

menu openmenu close
Global Targets / Our Research

氷の生成

氷の生成による危害

皆さん、氷がどのように形成されるかは何となく知っていると思います。けれど、氷の生成が私達に危害を与える可能性があるという認識を持っている人はほとんどいませんし、氷がどの様に生成するのかを詳しく知っている人はあまりいません。これらの事について詳しく知ると、生成したら困る場所に氷が生成するのを防ぐ術を理解するのに役立つのです。

では、氷の生成によってどの様な問題が起こるのでしょうか?氷の生成による様々な危害や損傷を見ていきましょう。多分一番よく知られているのは道路の凍結です。しかし、氷の生成によって問題が起こる場面は、例えば飛行機、風力タービン、建築物、電力ケーブル、と他にもあるのです。そして、これらの環境における氷の生成は、大きな損害を与える事や命に関わる致命的な結果をもたらす事があります。

航空機を運行する上で氷は大きな懸念事項です。氷の生成は、飛行中の航空機周辺の気流を変え、空気の抗力を増大させ機体を失速させやすくします。氷は航空機外部の機器にも支障を与えます。航空機への着氷は様々な飛行機で多くの事故につながっており、良く知られている例としては、1992年のUSエア405便の墜落事故、1989年のオンタリオ航空1363便墜落事故、2004年の中国東方航空5210便墜落事故、コルガン・エア3407便の墜落事故、があります。ここに挙げた事故に関連したものだけでも150名が亡くなっており、その他に小さな航空機でも多くの事故が起こっているのです。航空機には、機体に氷が生成するのを防ぐ様々なシステムがありますが、それでも人為的過誤や極端な気象条件により事故は起こります。

controlling-ice-growth-d01 controlling-ice-growth-d02

おそらく航空機に比べたら致命度は低いですが、大きな危害を与える可能性があるのは電力線への着氷です。電力線はどのような天候にもさらされますが、一般的に氷は風で取り除かれます。氷がどのように電力線に損傷を与えるかは非常に分かりやすいです。電力線に氷が生成すると電力線は重くなり、結果、電力線のケーブルが切れてしまうのです。航空機の場合と比較して電力線への着氷を防ぐ難しさは、ものすごい数の線が広い範囲にあるので、それらを常に監視し続ける事は出来ないという点です。

氷が電力線に多大な損害を与えた有名な例があります。2013年の12月、大きな氷嵐(着氷生の悪天候)が北米を襲いました。竜巻きや強風に加えて雨氷(着氷性の雨)が多くの電力線や電柱を切り倒しました。カナダのトロントでは30万人以上の人がこの着氷(氷の生成)による被害で電気のない状態に置かれました。2007年の1月にはアメリカのオクラホマ、ミズーリ、イリノイ州でおよそ60万人が着氷(氷の生成)による電力線損傷の被害で電気のない状態に置かれました。2005年の12月に北米を襲った氷嵐では、電力線への着氷による被害が広範囲に渡って起こり、100万人以上の人々が一週間以上に渡って電気のない状態に置かれました。恐らく最も有名なのは、1998年に襲った氷嵐による送電線の故障で、主にカナダで400万人以上の人々が電気のない状態に何週間も置かれました。その被害は大変大きく、電力系統の多くの部分を構築し直さなければなりませんでした。

電力線に関連して、風力タービンも着氷(氷の生成)によって被害を受けます。電力線と同様、風力タービンも強風や低い気温に晒せれるので着氷にはもってこいの状況にあるのです。タービンへの着氷は下記のものを含みいくつもの弊害をもたらします。

  • 着氷により重くなったタービンの羽を同速度で回転させることによりエネルギーがより必要となり、エネルギー効率を下げます。
  • タービンの羽に氷の重さが加わりダメージを与えます。この負荷によってタービンの羽が折れる可能性を高めるのです。
  • タービンの羽に着氷した氷が飛ぶ事によって、人や動物が怪我をします。

氷はどの様に生成するのでしょう?

そもそも、氷の生成を防ごうとする事自体、氷がどの様に生成するかを理解するのに役立ちます。それは思ったよりやや複雑で、考慮すべき条件がたくさんあります。温度、湿度、液体水の存在、全てが影響します。又、私達は表面に生成する氷に対応した空気中の氷の形成も考慮に入れます。しかし、たとえこれらすべての要因を含めても氷の生成の始まりは、ほとんどの状況下で同じ様な形で起こるのです。

物体の表面温度が0℃を下回ったら直ちに氷の生成が始まると考えるかもしれませんが、それは正確ではありません。氷は他のすべての結晶の場合と同じ様に、生成を始める為には核形成場所が要るのです。核形成場所は状態変化がしやすい場所(状態変化:個体 – 液体・液体 – 気体)ということになります。この核形成場所なしで、氷が生成する事は非常に難しいのです。表面上にある大抵の亀裂や欠陥は核形成場所ですし、空気中の埃や不純物もそうです。グラスの中の炭酸飲料の泡が形成するのも同じ場所(核形成場所)なのです。小さなキズがグラスにあり、そこが泡を形成する核形成場所となっているのです。お鍋の中の水が沸騰している時も同じ事が起こっているのですが、その現象をシャンパングラスの中を観察する事で見るのが一番おすすめです。

なぜ、これ(核形成場所について)がそんなに重要なのでしょう?ここで重要な事は、非常に滑らかな表面上に氷が生成するのは大変難しいのだという事です。実際、キズの一つもないガラスの表面上では温度が-30℃以下にならないと氷は生成しないのです!-30℃より低い温度になって初めてガラスの表面上の無作為な場所に核形成場所が自発的に発生し、氷が生成し始めるのです。

これは、空気中の雨、氷や雪でも同じ事が言えます。雨の雫や雪片は水蒸気から直接形成されるわけではなく、空気中に漂っている塵の周辺に形成されているのです。実際、核形成場所の作用をする雲を分散している小さな粒子から作り、雨を降らせる事が可能です。

氷は核形成をし、その後に結晶として生成して氷片として見られる複雑な形が作られるのです。結晶の生成は、その時に水や空気の周辺にどれだけ水があるかによります。

核形成と結晶の生成は小さな規模でも起こりますが、私達はそれが大きくなった時に氷の塊(バルクアイス)が形成されるのを懸念するのです。基本的に2種類のバルクアイスがあります:霧氷と雨氷です。霧氷は空気中の水蒸気から、液体になることなく直接形成されます。これは非常に寒い、通常風の強い状況下で起こります。風の吹く方向に生成される氷の様なものです。雨氷は落ちていく水滴が凍った時に形成されます。送電線に危害を与えるのは主にこの雨氷です。

どうしたら氷の生成をコントロールできるのでしょう?

大きな疑問となるのが、何が氷の生成を防ぐのでしょう?氷が形成される条件も、それを防ぐ、または取り除く技術もそれぞれ違うのです。疑問である:どの様にして氷の生成をコントロールできるのか?その答えは状況次第なのです。

氷の生成は化学的に防ぐことができます。道路が塩によって除雪されているのを見た事がある人は多いかと思います。塩が混ざった水は、水のみの状態より氷点が低いので、道路の氷は塩水という形態になることによって溶けるのです。この様な方法で氷の生成を防ぐ化学薬品は沢山あります。通常、凍結防止剤といわれるものです。一般的に凍結防止剤は液体水が氷に変わるのを防ぐ為に使われます。車の(内部の熱、摩擦熱を下げる)冷却材などでよく使われています。化学薬品による凍結防止剤の欠点は有害になり得るので地域の環境に良くない可能性があるという事です。

 

controlling-ice-growth-d03

上の図は航空機の能動的防氷システムのいくつかの例ですが、エネルギー消費と資金を要します。その他に、電源をオンやオフにする必要がない、自然に(受動的に)航空機表面に氷が生成するのを防ぐ受動的な防氷システムがあります。界面化学や水を弾く構造を使って行われる防氷システムがその典型です。

受動的な防氷システムは機能させるのにエネルギーを要しない理想的な防氷システムです。特に、国全体に拡がっていて注意深く監視するのが難しい電力線の様な場合は便利です。氷は概して水から形成されるものなので、水が無ければ氷はできない、水である段階で弾いてしまうというやり方です。これは、疎水性表面という、水がくっ付くのを嫌う材料を使ったものです。疎水性表面の例は自然界でも人工的に作られたものでも多くあります。植物の葉は、葉組織が氷でダメージを受けない様に疎水性表面になっています。蓮の葉が水を弾く疎水性表面なのはよく知られているでしょう。PTFE(テフロンとして知られている)は表面や中身がくっつかない為の加工です。他にも、洋服などにかける防水スプレーにはPDMSという疎水性ポリマーがよく使われています。

これらの表面疎水は非常に多目的に使われています。表面疎水の欠点は脆性で傷みやすく、時間の経過と共に表面疏水をやり直さなければならない点です。

表面疎水に加えて、現在そのマテリアルの発展のために多くの研究が行われている超撥水面があります。その名の通り、表面疎水よりさらに疎水性のある表面疎水です。疎水性表面は、水との化学相互作用によって水を弾くものですが、超撥水面はマイクロやナノパターンを用いて表面の水を分散させ続けます。水滴が入り込みづらいパターンで取り除き易い表面上に水滴を留まらせるのです。超撥水面は防氷界面として大きな可能性を秘めています。様々な超撥水面がありますが、多くの超撥水面が抱える問題としては、超撥水機能が水滴発生のスピードに追いつかず、水滴が微細構造に入り込んでくっついてしまうということです。そうすると、水滴は核形成場所となってしまい、氷が生成されてしまいます。

どうする?

核形成と結晶の生成にナノ構造が与える影響、特に上記の航空機やタービンの様に流動している条件下での影響を調べるのは私達の研究の一環です。水氷の生成に加え、ナノパターン素材における二酸化炭素結晶(ドライアイス)の生成についても研究しています。私達は、ドライアイスの生成を研究する事によって結晶が生成に及ぼす化学的な効果を構造効果から分離する事ができます。また、この研究は固相が気相から直接形成する樹氷生成を見事に具現化したのです。

私達は、流動状態の与える影響、その中でも殊にナノパターンの表面全般における影響に関心を持っています。ナノスケールのガス流動において起こる、ガスがガスとして作用しなくなる興味深い作用があります。私達は二酸化炭素と水氷におけるこの作用停止が結晶の核形成にどの様な影響を与えるかを研究しています。

 
Page Top