ファウリングとは何か
有機化合物、タンパク質、微生物、塩などが付着して、膜などの機能性界面の能力の低下を引き起こす現象をファウリングと言います。海水や汚染水などの物理的・化学的環境を操作することは現実的でないので、機能性界面への対策が必要不可欠です。
ファウリングの分類
種類による分類
大きく分けて付着物(ファウラント)は、コロイド・粒子、結晶とバイオマテリアルの三種類に分けられます。ファウラントの大きさもnmオーダーのコロイド・タンパク質から、mmオーダーのフジツボまで、様々な大きさの範囲で起こります。
付着の状態による分類
ケーキ状・ゲル状となって表面を覆う付着型と、固着・結晶化して表面と結合型があります。付着型は可逆的で物理的洗浄で除去する事ができますが、結合型は不可逆的で除去するには薬剤などが必要です。薬剤による除去は機能性表面にダメージを与えるリスクがあります。
詰まらせない必要性、その経済学的効果
分離膜や熱交換器の性能はファウリングによって時間と共に性能が低下していきます。それを回復・維持するためには定期的な洗浄が必要です。洗浄は機能性界面の寿命を縮める上にもちろん費用がかかります。例えば分離膜の洗浄と交換にかかる費用は分離の全ランニングコストの25-30%に達すると計算されています。
フジツボなどの船底付着物は全輸送コストの9%のロスを引き起こしていると見積もられています。フジツボはセメント状の物質で船艇に吸着していて分解が困難なためファウリングを未然に防ぐことが賢明です。
市場の大きさ
ファウリングに関係する産業は巨大なため、数パーセントの改善で大きなビジネ スになる可能性があります。
従来の対策
界面の親水化
疎水性/油性であることが多いファウラントを表面の親水化によって付着しにくくすることができます。
化学的効果ある塗料などを塗布する
例えばトリブチルスズ(TBT)は付着生物に対する殺傷効果のために船体塗料に用いられていました。しかし、TBTの有害性が認識され、現在全世界で使用が禁止されています。環境汚染を引き起こさずに、ファウリングを防止する新しい対策が求められています。
我々のアイデア
- そもそもファウリングとは、表面へのファウラントの輸送、ファウラントと表面の接触相互作用の2段階からなる現象です。機能性界面の動的構造を制御することで、ファウリング防止の機能を改善できる可能性があります。
- 平坦で親水的な流体のモデルでは界面の流速はゼロで、ファウラントが表面に到達して留まりやすいため、付着が容易です。
- 疎水的な界面では水は分子としてふるまって界面でスリップします。さらに多孔体などのパターンのある表面ではファウラントが侵入できない領域が存在し、そこの流れをコントロールするとファウラントを寄せ付けません。
- ファウラントよりも表面のパターンが大きければ逆効果なので、ファウラントの種類、使用状況に応じた表面のデザイン(かたち、サイズ)を決定する必要があります。私たちは、界面のエネルギーや「かたち」のデザインから特殊な顕微鏡を用いた界面近傍の流速測定、付着物の質量測定までの総合的な研究を通して、新規マテリアル開発の指針となる普遍的な効果の解明を目指しています。